2026年4月から義務化される「リチウムイオン電池内蔵製品」回収とリサイクルとは?

2026年4月、日本の廃棄物処理と資源循環の仕組みに大きな転換点が訪れます。政府は、モバイルバッテリー・携帯電話・加熱式たばこ機器の3品目を新たに「指定再資源化製品」に追加し、メーカーや輸入販売事業者に回収とリサイクルを法的に義務付ける制度を導入します。

リチウムイオン電池って何?どんなものに使われているの?

リチウムイオン電池を含む「小型充電式電池」とは、使い捨ての電池(一次電池)とは異なり、充電することで繰り返し使用できる小型で軽量な電池(二次電池)のことです。具体的には、リチウムイオン電池やニカド電池、ニッケル水素電池などがあり、製造メーカーや輸入業者などに回収・リサイクルが義務付けられ、電池にリサイクルマークが表示されています。

リチウムイオン電池は、軽量で高いエネルギー密度を持つ充電式の電池で以下にあげる製品に主に使用されています。

  • モバイルバッテリー
  • 電子たばこ・加熱式たばこ
  • ワイヤレスイヤホン
  • コードレス掃除機
  • 小型扇風機
  • 電動工具
  • デジカメ・ビデオカメラのバッテリー

なぜ義務化されるのか?

火災事故の増加

リチウムイオン電池を使用した製品は、スマートフォンやモバイルバッテリー、コードレス掃除機、加熱式たばこなど、私たちの生活を便利にしてくれる存在です。しかしその一方で、近年では火災事故の件数が増加しており、令和5年度には全国で2万件以上の火災が発生しています。これらの多くは、モバイルバッテリーやスマートフォンなど身近な機器からの発火によるものです。

リチウムイオン電池には可燃性の電解液が使われており、落下などの衝撃によって内部がショートし、急激に加熱・発火することがあります。実際に、以下のような火災事例が報告されています。

  • 令和7年7月20日:JR山手線車内でモバイルバッテリーが発火。原因は、発煙・発火の可能性があるとしてリコール対象となっていた製品でした。
  • 令和7年9月25日:東京都杉並区で、充電中のモバイルバッテリーが発火。

このほかにも、カバンに入れていたワイヤレスイヤホンが発火して所持品が焦げた事例や、就寝中に着用していたスマートウォッチが発火したケースも報告されています。

小型二次電池のリサイクル義務

リチウムイオン電池を含む小型二次電池は、資源有効利用促進法により、製造事業者や輸入販売事業者に対して「自主回収」と「再資源化(リサイクル)」が義務づけられています。これは、限りある資源を守るための重要な取り組みです。

対象となる電池には、ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池などがあり、これらにはカドミウム、コバルト、ニッケルといった希少金属が含まれています。これらの資源は再利用可能であり、電池の回収とリサイクルは資源の有効活用という観点からも非常に重要です。

対象となる製品と事業者の対応

以下の製品については、事業者による回収・リサイクルを行うべき「指定再資源化製品」として定められています。さらに、2026年4月からは新たに「モバイルバッテリー」「スマートフォン」「加熱式たばこ」が追加される方針が示されています。

対象製品

  • パソコン:デスクトップパソコン、ノートブックパソコン、ブラウン管式表示装置、液晶表示装置
  • 密閉形蓄電池:密閉形鉛蓄電池、密閉形ニッケル・カドミウム蓄電池、密閉形ニッケル・水素市区電池、リチウム電池

事業者の責務

指定再資源化製品の製造事業者や輸入販売事業者には、使用済み製品の回収とリサイクルが義務付けられています。取り組みが不十分な場合には、勧告や命令が出されそれに従わない場合は罰金が科されることもあります。

利用者の対応

利用者に対して罰則はありませんが、以下のような適切な廃棄方法が求められています。

  • 家電量販店や自治体の回収ボックスへの持込
  • 自治体のルールに従って収集制度の利用

リチウムイオン電池使用製品を利用する際の注意点

  • 高所からの落下など強い衝撃や圧力を加えないようにする
  • 高温になる場所では使用・保管・放置しないようにする
  • 使用可能時間が短くなった場合は、使用しない
  • 充電は安全な場所で、完了したらすみやかに充電機器から外そう
  • 異常を感じた場合はただちに使用を中止しよう
  • 発火した場合は、安全を確保しできれば大量の水で消化しよう
  • 製品情報、リコール情報を確認しよう
  • 火気に近づけたり熱を加えたり、分解しない

リチウムイオン電池製品の処分方法

リチウムイオン電池、ニカド電池、ニッケル水素電池を含む「小型充電式電池」を使用したモバイルバッテリーや電子たばこ、電動歯ブラシ、電動シェーバー、携帯型扇風機、電動式おもちゃなどの製品は以下の方法で処分しましょう。

  • 回収ボックス設置場所へ持ち込む
  • メーカーによる回収・リサイクル
  • 自治体の収集を利用する

回収ボックス

多くの自治体では、公共施設などに設置している「小型家電回収ボックス」にて回収しています。
回収対象となる小型家電の品目や膨張したモバイルバッテリーについては、各自治体により処分方法が異なるためお住まいの地域のウェブサイトなどを確認しましょう。

メーカーによる回収・リサイクル

一般社団法人JBRCが運営する回収協力店にて回収可能です。協力店・協力自治体はJBRCの検索システムから確認してください。

自治体の収集を利用する

環境省は2025年4月、全国の市区町村に対して「家庭から出される不要なリチウムイオン電池は自治体が回収する」方針を通知しました。これにより、より安全で身近な回収体制が整備されつつあります。

自治体により収集日や「小物金属」や「不燃ごみ」などごみの種別が異なるため、ルールをしっかり確認しましょう。

絶縁処理の方法

端子など通電部分をセロテープ・ビニールテープ・ガムテープ・絶縁テープなどでしっかり多い、露出しないようにしましょう。(紙製テープは収集時にはがれやすいため使用を避けましょう)

よくある質問

どんな製品が回収・リサイクル対象になるの?

2026年4月からは、モバイルバッテリー、スマートフォン、加熱式たばこなど、リチウムイオン電池を内蔵した製品が新たに「指定再資源化製品」として追加されます。これまでのパソコンや密閉形蓄電池も引き続き対象です。

家庭で使っていた製品はどうやって処分すればいいの?

自治体の回収ボックスや家電量販店などの協力店に持ち込む方法があります。電池が取り外せる場合は、端子を絶縁処理(ビニールテープなど)してから出してください。

リサイクルされた電池はどうなるの?

回収された電池は、専門業者によって分解・処理され、コバルト、ニッケル、リチウムなどの希少資源が再利用されます。これにより資源の有効活用と環境負荷の軽減につながります。

まとめ

2026年4月から義務化される「リチウムイオン電池内蔵製品」の回収・リサイクル制度は、火災事故の防止と希少資源の有効活用を目的とした重要な制度改正です。モバイルバッテリーやスマートフォン、加熱式たばこなど、私たちの身近な製品が対象となるため、正しい処分方法を知っておくことが安全につながります。

自治体の回収ボックスや家電量販店の協力店を活用し、電池の端子は必ず絶縁処理を行いましょう。回収された電池は専門業者により分解・再資源化され、コバルトやリチウムなどの貴重な資源として再利用されます。

「リチウムイオン電池 回収方法」や「モバイルバッテリー 処分」などのキーワードで検索される方も増えている今、正しい情報を知り、行動することが環境保護と持続可能な社会の実現につながります。

なお、処分方法に迷った場合や、複数の不用品をまとめて処分したい場合は、不用品回収総合相談窓口をご活用ください。専門スタッフが、製品の種類や状態に応じた最適な回収・処分方法をご案内します。

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この記事を書いた人

長野
長野ライター
廃棄物処理業界に携わって20年以上。これまでに3,000件を超える現場対応・相談実績を持つ。
不用品回収・粗大ごみ・産業廃棄物処理に精通し、現場対応から法令まで幅広く理解しており、現在は、各種許可を保有する信頼性の高い業者を紹介するマッチングサイト「不用品回収総合相談窓口」の代表として活動。適正な回収サービスの普及と、業界の健全化を目指して運営を行っている。

ライターとしては、これまで不用品回収・産業廃棄物・粗大ごみ関連の専門記事を100本以上執筆。実務経験をもとに、正確かつ実用性の高い情報発信を心がけている。